「かねる」という表現は適切に使う

「そのような特例扱いはいたしかねません」
このような言葉を、つかう看護師さんを見たことがあります。
患者として特例扱いをしないですよ、という意味だったのでしょうか。

 

ところで、とてもこの一見丁寧に見える表現が正しいのかどうか。

「そのような特例扱いはいたしかねません」

ちょっと気になります。

 

社会人になってよく使う言葉の一つに「◯◯かねる」があります。
これは補助用言とよばれるもので、動詞と結びついて「◯◯することができない」「◯◯することにたえられない」といった意味を表現します。

  • いたしかねる
  • わかりかねる
  • できかねる
  • 負いかねる

といった言い回しがあります。

 

依頼などを受けた際に、いろいろな事情から断らざるを得ない時に「◯◯かねる」を用いると、ストレートに「できません」といって断るよりも、柔らかいニュアンスを出すことができます。

 

ところが、「◯◯かねない」は「◯◯かねる」の否定形ではありません。
「◯◯しそうだ」という推量、それも好ましくない事態が起こりそうだという危惧を示す言葉です。

 

たとえば、

  • 今のままだと戦争になりかねない。

などで使用します。

 

看護師さんの働く病院で使用されていた表現は、もしかしたら違う意味に捉えられたかもしれません。